不妊治療コラム

報われない努力と決断。5AA「良好胚」で妊娠できなかった30代夫婦のリアルな記録

報われない努力と決断。5AA「良好胚」で妊娠できなかった30代夫婦のリアルな記録

判定日当日。Xで陽性報告を見る「地獄の待ち時間」

判定日当日。
緊張で、吐きそうだった。

病院に向かう電車の中で、
Xを開いて、同じ判定日の人の投稿を見る。

「あの人は、陽性だったんだ」

たくさん陽性の報告が流れてくるから、
もしかしたら大丈夫かもしれない。

でも同時に、
私はだめかもしれない、という気持ちも湧いてくる。

そんな感情が、
行ったり来たりしていた。

最寄駅に着くと、
足が重くなる。

今日、病院で結果を聞いてしまったら、
この移植周期が、終わってしまう。

保険適用の回数の中で、
私は本当に妊娠できるんだろうか。

病院に行きたくない。
泣きそう。
でも、行かなきゃいけない。

病院に着くと、
いつものように長い待ち時間。

判定日くらい、
少し早く呼んでくれたっていいのに。

そう思いながら、
祈るような気持ちで待っていた。

そして、ついに自分の番。

5AA良好胚なのに。「先生の顔で察した」あの瞬間の絶望

診察室に入った瞬間、
先生の顔を見て思った。

「あ……だめだったんだな」

どこか言いづらそうな空気を、
先に察してしまったから。

「残念ですが、陰性です」

そのひと言で、
すべてが終わった気がした。

その場では、
「だめでしたかー」なんて
笑いながら話していたけれど、

心の中は、

泣きたくて
逃げたくて
早くここを出たくて

何も考えられなくなっていた。

会計までの時間が、ひたすら惨めだった。

堪えている涙が、
今にもあふれそうで苦しい。

私、ここまで頑張ったのに。

過去に流産も経験して、
何度も心が折れて、
それでも、ここまで来たのに。

しかも、5AAの良好胚だった。

「いい胚ですね」って、
先生に言われたのに。

帰ったら、夫になんて言おう。

考えるのも、しんどい。

もう、帰らなくてもいいかな。
そうだ、消えなきゃ——。

不妊治療の権威がある病院の、あの静かな混雑は残酷だ。

どんなに辛くても、
平気な顔をして待っていなきゃいけない。

不妊治療で知った「努力が報われない」という現実

帰り道は、
とにかく涙を堪えた。

一滴も、こぼさないように。

でも、家が見えてきた瞬間、
我慢しきれなくなった。

泣きながら、家に入る。

今日は、もう何もしたくない。

どうして、だめだったんだろう。

何が、いけなかった?

サプリだって、たくさん飲んだ。

薬も、注射も、
ひとつも欠かさずに続けた。

体調が悪い日も、
この日のために頑張ってきた。

仕事だって調整してもらって、
迷惑をかけて、
それでも続けさせてもらっていたのに。

夫と、たくさん話し合って決めた未来だった。

その未来にならなかったら、どうしよう。

夫の言葉と二人で決めた「まだ終わりじゃない」

世界が、暗闇に沈んだ頃——
夫が、帰ってきた。

夫は、私の顔を見て察してくれた。

たぶん、わかっていたと思う。

いいことがあったら、すぐ連絡するのに、
今日は、何も送っていなかったから。

夫だって、辛くないわけがない。

ずっと、見守ってくれていた。

ふたりで、選択をし続けてきた。

それでも夫はいった。

「少し休もう。まだ終わりじゃないし、二人の暮らしだって毎日楽しいじゃない。」

判定日の朝、夫と決めていた。

もしだめだったら、
今日は、おいしいごはんを好きなだけ食べようって。

だから、ふたりで買いにいった。

着床日以降、我慢していた
お刺身も、生ハムも——

好きなだけ。

辛くても、
たくさん食べて、笑って、
また前を向きたい。

その気持ちを、
手放さないままでいようと決めていた。

あなたはひとりじゃない。報われなかった努力の先に

努力が、必ず報われるわけじゃない。

それを、本気で知ったのが
不妊治療だった。

こんなに悩んで、考えて、
それでも望んだ未来だったのに。

5AAという「良好胚」でも、
だめなときは、だめだった。

現実は、冷たい。

それでも、この時間が、
意味のないものだったとは思えなかった。

泣いて
怒って
絶望して
話し合って

それでも、
また「次」を考えてしまう自分がいる。

私たちは、
いま、ちゃんと生きている。

子どもがいるから、幸せになるんじゃない。

幸せの途中に、子どもがやってくる。
だから子どもがいないから不幸なわけではない。

もし、この記事を読んでいるあなたが、

結果を待っている人
陰性を告げられた人
5AAでさえ、だめだった人
「もう無理かもしれない」と思っている人

そのどれかなら——

あなたは、弱くなんかない。

ここまで、生きてきた人だ。

この先のことは、わからない。

でも、
今日ここまで来たことだけは、
誰にも否定できない。

努力が報われない日も、
それでも、生きている。

不妊治療とは、
そういう日々の積み重ねなのかもしれない。

あなたは、ひとりじゃない。

この記事を書いた人

この記事は、妊活ガイド 編集長のArisaが執筆しました。

自身の流産・不妊治療の経験をもとに、
妊活の中で直面しやすい「不安」「選択」「心の揺れ」について、
実体験を軸にまとめています。

Arisa(編集長)

Arisa(編集長)

妊活ガイド 編集長/当事者目線コンテンツ統括

流産経験|人工授精経験者|体外受精経験者|保険適用治療終了経験

治療歴: 流産を経験後、本格的に不妊治療を開始

妊活方法: タイミング法 → 人工授精 → 体外受精

流産を経験し、「妊活=必ず結果が出るものではない」という現実を
初めて突きつけられました。

頑張れば報われると信じていた自分が、
何もできず、立ち尽くすしかなかった時間もあります。

それでも、不妊治療を通して感じたのは
「授かるかどうか」だけではなく、
“どう生きるか”を選び続ける時間だったということでした。

妊活にまつわる情報は、ときに人の心を深く傷つけます。

だからこそ、綺麗ごとでも、ただの希望論でもない、
実体験に根ざした言葉で、
誰かの孤独を少しでも軽くできたらと願いながら、
妊活ガイドを立ち上げました。